静電場



電気(electricity)とは

電荷の別名、電気量(electric charge)とも言う
電気を帯びる。

エネルギーの一種、電力量(electric power)とも言う
電気が不足する。

電荷の流れを生み出す力である電圧(電池の起電力を含む,voltage)
電気が弱まる。

電灯の通称、最近では蛍光灯やLEDを含む照明機器一般に使われている
電気を点ける。電気を消す。

家電機器の総称
電気屋。

電荷の関与する物理現象(摩擦静電気、雷)全般
電気を学ぶ。

クーロンの法則

電苛には正負の二種類があり、同種の電荷は互いに反発し、 異種の電気は引きあう。特に点電荷(大きさの無視できるほど 小さい物体)の間に働く力の大きさFは、点電荷間の距離rの2乗に 反比例し、これらが持つ電気量(q1およびq2) の積に比例する。

F=(1/4πε0)(q1q2/r2)

線電荷、面電荷、体積電荷などの間に働く力は点電荷間の力を 重ね合わせて求める。

比例定数 は1/4πε0 で ほぼ、9×109[Nm2/C2]に等しい。

1クーロン(C)の電気量は、真空中に互いに1メートル離れて置かれた 無限に長い2本の平行導線に1メートル当たり2×10-7ニュートン(N) の力を及ぼす電流が1秒間に運ぶ電気量に等しい。

2019年より、電気素量の 1/1.602176634×10−19 倍が1クーロンの定義となった。

電場(電界)

一般に複雑な分布をなす電荷中の位置rに置かれた小さい点電荷q0 が受ける力がベクトルFで表される時、Fの大きさはq0に比例する。 このとき、ベクトルE=(1/q0)Fはrの関数となっており、元の電荷分布が作る 電場と呼ぶ。(電場の単位はこの定義からN/Cと予想されるが、これはV/mに等しい。) ただし、工学系では電場の変わりに「電界」ということが多い。

特に点電荷の作る 電場の大きさFは、点電荷間からの距離rの2乗に 反比例し、点電荷の電気量qに比例する。
F=(q/4πε0)(1/r2)

電場はベクトル場の一種でその流線を電気力線と呼び、正電荷から発して 負電荷で終わる。このように、正電荷はsource、負電荷はsinkに相当するが、 この向き付け(あるいは電荷の正負の定義)は便宜的なものである。


ガウスの法則


電位

任意に配置された電荷の作る静電場Eは保存力であり、
E=-grad V
または成分表示で
Ex=-∂V/∂x, Ey=-∂V/∂y, Ez=-∂V/∂z,
を満たすスカラー関数が存在し、静電ポテンシャルまたは電位と呼ばれる。 (電位の単位は定義からは、(N/C)m=J/Cであるが、これをボルトと定義する。)

特に点電荷qの作る 電位Vは、点電荷間からの距離rに 反比例し、点電荷の電気量に比例する。
V=(q/4πε0)(1/r)

力学におけるポテンシャルは微分すると力になるため静電ポテンシャルとは 単位が異なる。

電場と微少変位drの内積は単位正電荷を動かすために電場がなす仕事に等しい。 したがって、点AからBまで動かすための仕事は
AB E⋅dr = ∫AB (-∂V/∂x)dx + (-∂V/∂y)dy + (-∂V/∂z)dz = -∫AB dV = -V(rB) + V(rA)
より、AとBの電位の差で与えられ、途中の経路によらない。

閉曲線に沿って電荷を動かすのに要する仕事はゼロである。 もし、静電場に渦があると閉じた電気力線が存在することになるが、 この電気力線に沿った仕事もまた必ずゼロでなければならない。 とすると、これは仕事ゼロで電荷をいくらでも運ぶことが できることになり、熱力学第一法則に反する。 すなわち、閉じた電気力線の大きさは無限小、言い換えると 静電場は渦なしでなければならないことになる。

点AとBが等電位面上にあれば、電場と変位ベクトルの内積はゼロ になる。したがって、電場は等電位面に垂直である。(定義から 電場は電位が減る方向に向いている。)

実験的には電位差のみが測定され、電位そのものの値には 定数部分の不定性がある。理論的には無限遠点(実用上は 地球表面)の電位をゼロと仮定することが多い。
V(r)=V(∞)+∫r E(r)⋅dr


導体と絶縁体

絶縁体(誘電体)
ガラスやビニールのように電荷(あるいは電気量や電流)を通しにくいもの。

導体
金属や電解質溶液のように電荷をよく通すもの。 それぞれ伝導電子(自由電子)や正負のイオンが電荷を運ぶ担体(キャリア)の 役割を果たす。

静電誘導

導体に帯電体を近づけたりして電場E0をかけると導体内の担体が 移動して表面に正負の電荷が帯電し、導体内で印加した電場が打ち消されて ゼロになる。このため、導体内部はすべて等電位で、正負の電荷が等量 分布して互いに完全に打ち消しあっている。静電誘導によって生じる電荷の 総和は電気量保存の法則よりゼロである。

導体表面も等電位面であるから導体のすぐ外側での電場は表面に垂直になるように 表面電荷が分布する。ガウスの法則より表面電荷密度は σ=ε0E0で与えられる。

ε0は同じ電場内での導体の静電誘導の大小を表すことになり 真空以外では比誘電率をかけた一般の誘電率を使う必要がある。

電気双極子

正負2つの点電荷±Qをわずかに(δだけ)離して置いたもの。

特に、一様電場E0中に置かれた半径aの導体球は静電誘導のため、双極子モーメント P=Qδ=4πa3ε0E0 の電気双極子の様に見える。(この場合、導体球内部の電場はゼロで、 表面電荷密度は、E0の方向となす角をθとして、 σ=3ε0E0cos(θ)となる。)

一様静電場中の導体球における静電誘導

導体内部はすべて等電位で、正負の電荷±Q=±4πa3ρ/3が等量 分布して互いに完全に打ち消しあっている。

x方向に電場E0をかけると導体内の電荷分布の中心がわずかに(±δ/2) 移動して表面に正負の電荷((g)式)が帯電する。(注意:教科書では正の電荷だけがδ 移動するとしているが、両方が半分ずつ動いたほうが合理的。結果は(b)式と(d)式が少し変わるだけで どちらの仮定でも大差ない。)

各電荷球の作る電場は(b)式と(d)式(を修正したもの)で与えられ、2つを重ねあわせると 元の導体内部に(e)式で与えられる電場が作られることになる。これが始めのx方向の外部 電場E0と重ね合わせてちょうどゼロとなった状態が静電誘導を表している。

従って、外部電場と誘導される電荷面密度の大きさには(h)式の様な関係が成り立ち、 E0の方向となす角をθとして、 σ=3ε0E0cos(θ)となる。

当然ながら、外部電場がゼロなら誘導される電荷密度もゼロである。

静電誘導を起こした導体球の電気双極子モーメント

上記の体系は十分遠くから見ると、正負の電荷±Qがδだけ離れた 電気双極子と同じとみなせる。

従って、一様電場E0中に置かれた半径aの導体球は静電誘導のため、双極子モーメント P=Qδ=4πa3ε0E0 の電気双極子の様に見え、それが作る電場は(f)式でρδ を(h)式で消去したもので与えられる。外部電場も含めて書くと以下のとおり。

Ex=(P/4πr3)(3x2/r2-1) + E0, Ey=(P/4πr3)(3xy/r2), Ez=(P/4πr3)(3zx/r2)


静電容量

静電容量(キャパシタンス)
帯電導体の電荷Qと電位(無限遠点をゼロとする)Vは比例する。 静電誘導の効果が無視できるほど小さな単位電荷を帯電導体に近づけると、 Q>0の時は仕事を要し、Q<0の時は単位電荷の運動エネルギーがVだけ増大する。 このとき、QとVの比例係数を導体の静電容量(キャパシタンス)と呼び、 その単位をファラド(=クーロン/ボルト)。

半径aの孤立導体球外部の電場は径方向にE(r)=(Q/4πε0)(1/r2) であるから、表面の電位は
V(a)=V(∞)+∫a E(r)⋅dr =+∫a (Q/4πε0)(1/r2) =[-(Q/4πε0)(1/r)]a =(Q/4πε0)(1/a)
したがって、導体球の静電容量はC=4πε0a であることがわかる。直径1メートルの導体球で111[pF]、地球を一つの導体球と考えると 700[マイクロF]。
孤立導体に他の設置した導体を近づけると、試験電荷を近づけたときに 誘起される表面電荷やそれに比例する電場が導体間に制限されるため、 静電容量は増大する。

平板コンデンサー(蓄電器、キャパシター)
面積Sの2枚の平行導体板AとBを極めて接近させて(間隔dで)対置し、静電誘導を 利用して電荷Q(=SAσA==-SBσB)を蓄えるもの。
特に両導体の面積が等しければσ=σA==σBで、 導体間の電場は孤立平板電極の作る電場と同じ( E=σ/ε0=Q/Sε0で空間的にほぼ一様) になり、それ以外の全空間の電場は打ち消しあう。 したがって、導体間の電位差は
VA-VB=∫AB E⋅dx =E(xA-xB)=Ed=Qd/Sε0
より 平行導体の静電容量はC=ε0S/d であることがわかる。

静電容量の合成
コンデンサーの並列接続の場合、合成容量は 各コンデンサーの容量の総和で与えられる。
C=∑jCj

コンデンサーの直列接続の場合、合成容量の逆数は 各コンデンサーの容量の逆数の総和で与えられる。
1/C=∑j1/Cj


分子の極性

分子は電荷キャリアがなくの一般には絶縁体である。(グラファイトの巨大分子は例外。)
無極性分子
対称性が良く正負の電荷分布の中心が一致しているため、 分極を除いて電気的な影響を受けない。

有極性分子
分子内で正負の電荷が偏在しており、 電気双極子のように振舞う。通常は多数の分子が乱雑に配置されているため 全体として電荷の偏在がないように見える。

誘電分極

誘電体の内部の正負の電荷分布は巨視的には同じ密度で一様に 分布しており、正負が完全に重なって打ち消しあっている。 電場E0をかけると電荷分布がわずかにずれ、 絶縁体の両端表面に正負の電荷(分極電荷)が滲み出す。 ただし、静電誘導と違って内部でE0が完全に 打ち消されるわけではない。(内部の電荷分布は0。) つまり、誘電分極した誘電体の一部を取り出しても 両端に分極電荷が現れる。(永久磁石の磁荷に似ていて、 真電荷と違って 正負に分けて取り出すことができない。)

分極ベクトル(電気分極)

誘電分極の方向(正電荷のずれている方向)と 度合いを示すベクトル。その大きさは 単位体積あたりの双極子モーメントで定義する。

長さl断面積Sの誘電体の両端に誘電分極で発生する 電荷の面密度を ±'σとすると、この誘電体の双極子モーメントは σ'Sl。したがって分極ベクトルの大きさはP=σ'

電気感受率

通常、誘電体の分極ベクトルは外部電場Eに比例し 等方性物質では方向も一致する。
P=χeε0E
電気感受率χeは真空中では0であるので、 真空中の誘電分極も0になる。

平行平板キャパシターの電極間に電気感受率χeの 誘電体を挿入すると、静電誘導で導体に誘起されるσは一部、 誘電体の面電荷σ'=P で打ち消され(σ0=σ-σ')、 誘電体内部の電場は
E=σ00=(σ-σ')/ε0
と減少する。逆に、キャパシターに印加する電位差が同じで、電場を同じ 強度にすると、キャパシターの導体の面密度は大きくすることができる。
σ=σ0+σ' =ε0E+χeε0E =(1+χe0E =keε0E =εE

したがって、電気感受率χe、あるいは 比誘電率ke=1+χeの大きな 誘電体を用いることにより、キャパシターの容量を ke倍にすることができる。
C=keε0S/d =εS/d

電束密度

電場と分極ベクトルから定義されるベクトル
D=ε0E+P=ε0(1+χe)E =keε0E=εE

誘電体が存在する時のガウスの法則は分極電荷を考慮せず
∫∫S D⋅n dS = ∫∫∫Vρreal dV
と表される。これは、D=ε0E'で定義される 仮想電場E'のある真空を考える場合と等価である。 ε0E'=εEより、E'=keE となり仮想電場は 実電場より大きく、分極電荷による真電荷のキャンセル が無い事に対応している。


電場のエネルギー

容量Cのキャパシターに電荷qが充電されている時(つまり、電位差が V(q)=q/Cの時)、さらにdqという電荷を充電するのに必要な仕事は v(q)dq。したがって、電荷Qのキャパシターに(より正確にはキャパシターの 電極間の電場に)
W=∫0Qv(q)dq=(1/C)∫0Qqdq =Q2/2C
だけのエネルギーが蓄えられる。

平板導体キャパシター(誘電体付)ではC=εS/d, Q=σS より、極板間のエネルギー密度(単位体積あたりのエネルギー)は w=W/Sd=σ2/2ε
ここで、σ=εE=Dであるから、 w=εE2/2=D2/2ε=DE/2 となる。この関係は平板導体キャパシター以外にも一般に 成り立つ。

孤立導体球(C=4πε0a)の外部の電場は E(r)=Q/4πε0r2であるから エネルギー密度は w(r)=εE(r)2/2 =Q2/32π2ε0r4
従って、電場に蓄えられるエネルギーは
W=∫0w(r)4πr2dr =(Q2/8πε0)∫0(1/r2)dr =Q2/8πε0a
となるが、これは Q2/2Cに等しい。