しかし、証明問題の学生の解答にはもっとすごい変形バージョンが出てくる。
1=f/(ma)
あるいは、例えば外力がf=f0sin(t)などという関数で与えられる場合、
sin(t)=ma/f0
最初の例では左辺は単なる数値であり、後の例では数学的関数。つまり、これは
数値や関数が物理的変数で定義できますよという数学的な関係を示す式?になっている。
(わけがわからん。)
はじめのA=Bでは等値だ。式変形のA=A1=A2=A3では代入だ。 だからといって、A3=B1は代入とは認められないぞ。そもそも 一つの式の中にある等号は一つの意味しか持ってはならないはず。
プログラム言語ではこれらの3つの意味を区別して別々の演算子を割り当てているものが多いが、 数学では「=」一つで共用しているので混乱したのかもしれない。
代入の場合は式中に等号がいくつも現れることもあるが、式が途切れたときは注意が必要。
例えば
A=A1=A2
(なにか説明)
=A3
というような書き方は減点対象。A=A3というように必ず左辺と右辺を明示すること。
先に書いたように、物理法則を表す式(例えば、F=mg)は左辺と右辺の物理量が次元も含めて 等しいことを示す。だから、ここでの等号の意味は「等値」だ。 これに対して、上の例のm=1[kg]の等号は「代入」であり、最後の F=9.8[N]では、Fという物理量の数値が単位を含めて9.8[N]と「等値」であることを 示している。
電磁気学の分野ではさらに注意が必要である。例えば、 導体球の静電容量はC=4π ε0aという公式で求められるが、 この公式はSI単位系でのみ成り立つ。(他の単位系ではε0は 現れず、数値定数も異なる) このときε0はπと同様に定数値であり(πと違って単位も持つ)、aの値が指定されたときには π=3.14と同様に必要な有効数字を使って、Cの値を 同じ有効数字の範囲内で決定しなければならない。 (仮に半径が1[m]であっても、単にC=4π ε0と書いただけではダメ。 これでは式としての次元が両辺で一致しないし、Cに対する数値+単位を与えるものでもない。 注:この項目に関する記述は2015年始めに少し加筆修正した。)
相対論の世界では、時間をその時間の間に光が移動する距離で表わすことが 一般的らしい。即ち、時間も長さの次元を持つと言わざるを得ない。 同様に、プランク単位の量で規格化したと理解していた量子重力理論の 世界では、次元そのものも変わっているという理解が正しいらしい。 (注:この項目に関する記述は2018年半ばに加筆した。)
すこし高度になるが、 熱力学の問題で断熱膨張後の空気の温度を20Kと平然と答えた人もいた。そんな低温では空気は 液化してしまうって。 答えの数値がどのあたりに来るかという常識的検討が全く欠如しているのだろう。