核融合工学と世界の核融合開発


本章では核融合工学と世界の核融合開発のトピックスについて学ぶ。
(参考書) 「核融合のためのプラズマ物理学」宮本健郎(岩波書店)、 「プラズマエネルギーのすべて」プラズマ核融合学会(日本実業出版社)、 「核融合への挑戦」吉川庄一(ブルーバックス)

核融合工学

核融合炉工学で重要なテーマを5つ挙げます


ITER計画

全世界の半分の人が属する7つの極(ロシア、アメリカ、ヨーロッパ連合、日本、中国、韓国、インド)が 国際協力で建造しているトカマク型核融合実験炉。 主な沿革と予定は以下の通り。
1985年
米ソ首脳会談(レーガンとゴルバチョフ) で東西緊張緩和のシンボル事業として提案。

1988〜1990年
概念設計活動。

1992〜2001年
工学設計活動。(1998年より3年延長、米一時脱退、中韓印参加) 日欧のトカマクでの閉じ込め改善等を取り込んで、建設費の見積りが半減しました。

2005年
建設サイト(カダラッシュ、サンポールデュラン)決定。

2007年
IO(ITER機構)発足。初代所長、池田要。2代目所長、本島修。3代目所長、ベルナール・ビゴ。

2025年?
建設終了、ファーストプラズマ。

2035年?
核燃焼プラズマ(DT)実験。

ITERでの目標は、 ITER計画の特徴は、7つの極で部品を製造し、物納して組み立てるというものです。 これにより、各極の産業界が核融合炉建造のためのノウハウを蓄積できると考えられています。 日本は、トロイダルコイルや中性粒子ビーム加熱装置を担当しています。

ITER機構では建設サイトの写真や開発中の部品の写真を公開しています。 また、コミックも公開されていますので、時間のある時にでも見ていただければと思います。 ITER計画が始まってからすでに35年です。後たった5年というべきか、 まだ5年もかかると見るかはいろいろ考え方がありますが、 これからは核融合にとって重要な時期である事は 間違いないでしょう。 日本は部品調達には大きな寄与をしていますが、人的参加は極めて少ないです。 ITER機構では、プラズマや核融合に限らず、幅広い分野でのエキスパートを国際公募しています。


BA(幅広いアプローチ)

核融合炉の原型炉DEMOを目指したITERを補完する研究プロジェクト。 ITERサイトをヨーロッパに譲った代わりにEUの Fusion for Energyが六ヶ所サイトでの本計画に10年間 (2007〜2017) 協力することになっている。 当初10年の予定でECとの国際協力でスタートしましたが、 最近フェーズIからフェーズIIに移行し、研究継続が進められています。

実施される計画は


NIF

アメリカのローレンス・リバモア国立研究所内で建造されたレーザー核融合に関する実験施設 とそこで行われている自己点火実験の名称。 192本のレーザービームを円筒型のターゲット内面に照射してX線に変換し、 固体水素ターゲットを爆縮して慣性核融合の自己点火を目指す。

アメリカが一時期ITER計画から撤退したおりに NIF計画がより安価な方法としてスタートしたが、その後建設費は増大し続け、 2009年には施設が完成したものの、自己点火の実証には 均一な爆縮の実現のため2022年までかかった。

なお、NIF計画には軍事的側面もあるため、外国人の直接的な共同研究は認められていない。 慣性核融合のプラズマの爆縮過程の計算は、長崎型原爆の炉心の計算に相通じる点が多々あるからです。