トカマクと核融合実験装置


核融合実験装置では数keVの電子温度のプラズマから 軟X線、高速電子か硬X線が発生する。 また 重水素の加熱ビームを用いたり、イオン温度を十分に上げると 重水素+重水素(DD)反応による中性子が発生します。 したがって、放射線発生装置としての安全管理が必要であり、できればこれらの放射線を何らかの利用することが望ましい。、
この講義では、磁場を使ったトーラス閉じ込め装置のなかでも 軸対称系のトカマクと非軸対称系のヘリカル系だけを扱うことにします。 トカマクやヘリカル系は今日の核融合研究の中心んとなる閉じ込め方式で、 核融合中性子を実際に生み出している装置もあります。 本講義では、装置の設計や放射線計測を中心に扱いたいと思います。

核融合研究のあらまし

核融合研究のあらましはローソン図と呼ばれるグラフで説明できます。 縦軸はイオンの温度、横軸はイオンの数密度にエネルギー閉じ込め時間をかけたものです。 右上のQ=1と書かれた曲線は、重水素+三重水素(DT)による核融合エネルギーが プラズマ加熱に要するエネルギーと等しい臨界プラズマを示しています。(ローソン条件)

核融合研究は第二次世界大戦後の冷戦下にスタートし、 様々な要因から 1958年に情報公開され、以来半世紀以上もあるときは競争し、 あるときは協力して研究活動(炉心プラズマ物理、装置設計、 計測、核融合工学)が勧められて来た。

炉心プラズマの閉じ込めには様々な方式が提案され、その方式を応用した 実験装置が作られたが、 1960年代は失敗に次ぐ失敗で、煉獄(Purgatory)の時代と称されていた。 この限界を克服した装置の一つが、旧ソ連のサハロフが考案し、 アルチモヴィッチのグループが建設したトカマク(T3やT4)で、1keVの電子温度の プラズマを始めて達成した。 トカマクは、トーラスの主方向に流れるプラズマ電流によるピンチ効果で、プラズマの拡散を 抑え、同じ向きに協力な磁場でプラズマ電流の安定化を図る。さらに、 2keV以下の温度では、プラズマ電流によるジュール加熱が有効に働き、 1970年電後では驚異的な高性能高温プラズマを得ることが出来た。

トカマクは、レーザーを使った新しい計測法を開発した イギリスの研究チームとの 国際共同研究でその性能が 実証されたのち、世界中に広まりました。

トカマクの放電シーケンス

電磁気学の演習問題で良く問われますが、 2本の直線導体に同じ向きに電流を流すと導体同士が引き合います。 プラズマに電流を流すと、プラズマ電流を磁力線が締め付ける様に 働きます。これがトカマクでの プラズマ閉じ込めの基本となるピンチ効果です。

小型トカマクNOVA IIの放電シーケンスをみましょう。 トーラス方向の強い磁場Btを立ち上げて、ほぼ一定になった時に プラズマ電流Ipを流します。 これは、鉄心に巻き付けた1次コイルの電流を変化させて、 電磁誘導によって トーラス方向の電場を発生させて行います。 ループ電圧Vlが、この誘導電場の大きさを表わします。

真空容器の真空度が良いと、このループ電圧は1ボルトを切るくらいになり、 プラズマ電流の値や持続時間を大きくすることができます。 昔は、何度も放電を繰り返して真空容器に吸着したガス分子をプラズマイオンでたたき出し、 磁場コイルの通電シーケンスを微調整して、理想的な放電を得るためのならし運転をしました。 これを、放電洗浄と呼んでいました。

Torusにおけるjoule plasma

トカマクを始めとする トーラス真空陽気におけるジュールプラズマ生成は 直流放電であるが、電極がないというきわだった違いがある。 有極放電では放電が(electron avalancheが)空間的に どの様に成長するかを調べることが 重要である。 しかし、toroidal dischargeではendlossであるので、 時間的な変化を追跡することが重要となる。 有極直流放電では陰極から放出された電子のかなり大きな部分は、 何らgasと相互作用せずに陽極に到達し、一部の電子がplasma生成に 寄与するだけであるが、それで十分なplasmaが生成される。 toroidal plasmaでは、この様な相互作用をしない電子は際限なく 加速されることになり、外部から誘起させる電流がこの種の電子(= 逃走電子 runaway electron) によって運ばれるのは大変不都合である。しかし、tokamakの様な 中での電離の進行、plasmaの生成はまだ研究され尽くしていない。

Toroidal geometryにおけるBreakDown

TokamakやStelleratorの様なtoroidal体系における 直流放電は電極を持つ放電とは異なる点がいくつかある。
  1. elecreon mobility
    vde E = {e/(m νm} E は電場Eを印加した時のelectronの平均の速さを与える。 電極間放電では一度もcollisionなくanodeに到達するelectronが 存在しても、そのenergyは極間に印加された電圧に相当する 値までである。toroidal dischargeではelectronの trajectoryが安定であれば、一旦高いenergyまで 加速されると、σcdは小さくなり、 ますますenergyは上昇する。この様な電子を逃走電子(runaway electron)と呼ぶ。

    (例)H2 gas. vd=3.5 × 105 E/P (vd: cm/sec, E/p: V/(cm torr)) が E/p=0 ∼ 20 で成立する。 d=30 cm, V=3 V (E=0.1 V/cm), p=0.01 torr (E/p = 10)で vd=3 × 106 {cm/sec}となり、 mean free path λは
    λ=vdm=eE/{m μm2} ={vd2 m/e}E ≈ 7 (m)
    d=30 cmに対して約1.4 % のelectronはcollisionせずにanodeに達する。 普通のtoroidal dischargeでは p=10-4 torrで放電を始めるが、 λ=70 mにもなり、有極放電はこのgas圧では不可能である。

  2. 有極放電におけるplasma lossは電場によるmobilityで電極に向かう 流れで決まる。electron avalancheが始まっても、それはanodeで 終わる。そのために電離度は高々1 % (differential pumping等特別の工夫をした場合を除く) である。 toroidal dischargeでは閉じ込め用磁場がある場合には、 electron avalancheは中性ガスがなくなるまで持続して100 % 電離(fully ionized plasma)となる。
  3. 以下にtoroidal plasmaの条件を調べる。 例として H2 gas、体系としてNOVA IIを考える。 即ち、R=30 cm, a=6 cm, Bt=20 kG. 大凡の放電条件はv_l=40 V (E=0.2 V/cm), p=10-4 torr (nn=3 × 1012 { molecules/cm3}). だから、E/p ≈ 2 × 103
  4. First Townsend's ionization coefficient α [cm-1]
    data sourceにより違いがあるが
    α/p=2.5 [cm-1/torr] (E/p > 100)
  5. mobility
    (先に述べた様に問題があるがE/p >> 20まで extrapolateできるとする)
    vd=3.5 × 105 E/p
  6. ionization rate (freq.) ;Z
    第1タウンゼント係数と ドリフト速度より
    Z=α vd=9 × 105 E (Z: sec-1, E: V/cm)
    Zは1個のelectronが1sec当り電離する数である。
  7. Lossとして、(a)小半径方向のdiffusionD、 (b)toroidal効果によるdrift、 (c)toroidal磁場Btのerror磁場を考える。

    (a) 強いBtがあるので、衝突当りの step lengthにはLamor radius ρeをとる。
    Dm > ρe2 < =νm (vce)
    v=4 × 107 √{Te[eV]} [cm/sec], ωce=1.76 × 107 Bt [G],
    νm=nn vth σm =(3.5 × 1016 p) × (4 × 107 √{T_e}) × (4 × 10-15/√{Te}) =5 × 109 p.
    Te=0.1 E/p (E/p < 100), 10(E/p > 100)
    これらを代入すると
    D=2.5 × 109 E/B2 (E/p < 100), 2.5 × 10,sup>11 p/B2 (E/p > 100)
    B=104, E=0.2, p=10-4を代入すると D=0.15 cm2/s (a=6 cmを入れてLoss rateは βD=D/a2 =5 × 10-3 sec-1) をうる。これは非常に小さな値である。 実際には、はるかに大きな diffusionが予想されるが、これはfluctuationの 電場 ∼{E} ∝ TeとBによるdriftによるもので Bohm diffusionと呼ばれる。半経験的な値として
    DB=6 × 106 Te[eV]/B[G]
    が用いられる。Te=10 eV、B=104 Gを入れて、 DB=6 × 103 cm3/sec (βD=DB/a2=1.7 × 102 sec-1) を得るが、これでもsourceの大きさに比べて無視できるほど小さい。

    (b) Toroidal driftによるLoss
    磁力線の曲りによるdriftは
    vd= 1/(ωceR) (v2/2 + v//2)
    で与えられる。第1項は∇ Bによるdrift、 第2項は磁力線に沿って動く粒子のcentrifugal forceに よるものである。R=30, ωc=18 × 1011, v=108 (Te=10 eV), v//=3.5 × 105 E/p を代入すると vd= 103 + 2 × 10-2 (E/p)2 より
    βd=vd/a =2 × 102 + 4 × 10-3 (E/p)2 (sec-1)
    E/p=2 × 103 (これには問題があるが)、 を入れると第二項は $1.5 × 104 (sec-1) となる。

    (c) error field
    BTに対してBV or/and BH成分を持つerrorが ε BTあると、その方向へのdriftは v//BH(V)/BT= ε v// であり、これによるlossは
    βE=ε v///a = {ε/6} × 3.5 × 105 E/p =ε × 108
    となる。 ε=0.01 % でtoroidal driftによるlossとcomparable となる。

    以上より 電離速度とトロイダルドリフト損失項 を等しいとすると
    9 × 105 E = 2 × 102 + 4 × 10-3(E/p)2
    E=0.2より(E/p)=6 × 103, p=3 × 10-5 torr
    以上の計算では ドリフト速度 の仮定が問題である。 より正確な評価が必要である。

電子ー中性粒子散乱と電子ーion散乱

電子ー中性粒子散乱では中性粒子の分極作用が効く。 dipole fieldはelectronに対して∝ 1/r4の静電potentialを つくる。これにより散乱断面積はTe-1/2 に比例する。一方、電子ーionはcoulomb pot.による散乱で $Te-2に比例する。
σe-n ∼ 3 × 10-15Te-1/2, σe-i ∼ 1.5 × 10-12Te-2
従って、少し電離が進んでe-n、e-iのcollisionが等しくなる時の nn,ne=ni を求めると、 Te=1 eVでnn σen=ne σei より ne/nn=2 × 10-3, Te=10 eVでは ne/nn=6 × 10-2となり、電離が1 % を越えるときはe-i collisionは無視できなくなる。

Tokamakの平衡

MHD方程式
p =

j
 
×

B
 
(1)

×

B
 
= μ0

j
 
(2)
(1)。 (2) より[j\vec]を消去
-p = 1

μ0

B
 
×( ×

B
 
) = 1

2 μ0
B2 - 1

μ0
(

B
 
·)

B
 

(p+ B2

2 μ0
)- 1

μ0
(

B
 
·)

B
 
= 0
(3)
tensor形式で書けば
i {(p+ B2

2 μ0
)δik- 1

μ0
Bi Bk } = 0
ここで、 ·[B\vec] = 0 を使った。

tensor
Tik (p+ B2

2 μ0
)δik- 1

μ0
Bi Bk
(4)
とすれば

Tensor の約束で同一項で同じ suffix が表れたら、それに関する和をとることになっている。

i Tik = 0
(5)
恒等式
i rk Tik = δik Tik + rk i Tik
(6)
の右辺第3項は (5)より0になる。 (6)式をTokamakのplasma volumeで積分すると



plasma 
Tii dV =


plasma 
i rk Tik dV =


m.s. 
Tik rk dSi
(7)
(7)に(4)を具体的に入れると



plasma 
(3p+ B2

2μ0
) dV =


m.s. 
(p+ B2

2μ0
)

r
 
·d

S
 
-


m.s. 
(

r
 
·

B
 
) (

B
 
·d

S
 
)
(8)
(1) 式で[B\vec]及び [j\vec]との内積が0になるから 等圧面上に磁力線は走り、磁気面を構成する。電流[j\vec]はこの 面内を流れる。(7)(8)の面積分はこの磁気面の 一番外側をとるものとする。従って(8)式右辺第2項は [B\vec]·d[S\vec]=0より消える。



plasma 
(3p+ B2

2μ0
) dV =


m.s. 
(p+ B2

2μ0
)

r
 
·d

S
 
(9)
(7)式の形式をVirial theoremと言い、 (9)はTokamakでの具体的表現と言える。

(Virial theoremの基本形は平衡にある粒子系で、粒子の 座標、速度、質量、粒子に作用する力を夫々、 [r\vec]i、[v\vec]i、mi、[F\vec]i とするとき、 [1/2]Si [r\vec]i ·[F\vec]i をVirialと呼び、 [1/2]Si mi vi2 = -[1/2]Si [r\vec]i ·[F\vec]i が成立する。これをVirial theoremと呼ぶ。)

plasma中の平均値と境界との関係を具体的に求めるためには (9)式の他にもう一つ独立な関係がいる。 (3)式を直接積分する。



plasma 
{(p+ B2

2μ0
) - 1

μ0
(

B
 
·)

B
 
} dV = 0
(10)
ここで積分を全plasmaにわたって取れば自明の無意味な式に なってしまう。 左図の様に(注:ドーナツ状のプラズマを)d φで切り取った 体積で積分する。この時toroidal方向、vertical方向は対称性 により0となるのは自明。主半径方向を求める。 (10)式を変形して





S 
{(p+ B2

2μ0
) d

S
 
·

e
 

r 
-

B
 
·

e
 

r 

μ0
(

B
 
·d

S
 
) } = 0
m.s.上の面では第2項は0。 [e\vec]rは主半径方向unit vector。

plasma断面をSφとすると
dφ


m.s. 
(p+ B2

2m0
)

e
 

r 
·d

S
 
-2


Sφ 
{(p+ B2

2μ0
) dSφ- Bt2

μ0
dSφ } × d φ

2
= 0
Sφのvectorは[e\vec]rと反対向きなので負符号を つけた。よって



m.s. 
(p+ B2

2μ0
)

e
 

r 
·d

S
 
=


Sφ 
{(p+ Bp2

2μ0
- Bt2

2μ0
) dSφ
(11)
ここで、境界上のBt(a)は
Bt(a) = Bt0(1- a

R
cosω)
(12)
と表される。Bp(a)を
Bp(a) = Bp0(1+ a

R
Λ cosω)
(13)
と表されるとし、Λを求める。
dSφ = ρd ρd ω


e
 

r 
·d

S
 
=(R+acosω) acosωd ωd φ


r
 
·d

S
 
=(R+ ρcosω)(R+acosω) a d ωd φ
の関係を用い、 [a/R], [a/R]Λ を微少量として一次の項までとって演算すると ( < > は断面内の平均値)
3 < p > + < Bti2 > + < Bpi2 >

2μ0
= (Bt02 + 3 Bp02 + 2 Λ Bp02 )

2μ0
(14)

< p > + < Bpi2 > - < Bti2 >

2μ0
= (-Bt02 + Bp02 + 2 Λ Bp02 )

2μ0
(15)
を得る。これより和と差をとると
< p > + < Bti2 >

2μ0
= (Bt02 + Bp02 )

2μ0
(16)

Λ = βp + 1

2
li -1,  βp = < p > 2μ0

< Bpi2 >
,  li = < Bpi2 >

Bp02
(17)
となる。 ここで、 < > はplasma断面における平均、 plasma境界における磁場が
Bt(ρ = a) = Bt0(1- a

R
cosω)
(18)

Bp(ρ = a) = Bp0(1+ a

R
Λ cosω)
(19)
とした。磁場の計算からこの形をしたplasma 表面磁場を得るに必要な垂直磁場の強さを求めること もできるが、より直感的方法で求める。

平衡に必要な垂直磁場

垂直磁場Bvの実験データが示す様に、プラズマ電流を流すためには、一定の強さの 垂直磁場が必要です。 この垂直磁場について少し考えてみましょう。 トカマクのプラズマはピンチ効果で閉じ込められていますが、ドーナツ状に曲げることにより、 ドーナツが広がるようになります。 プラズマを広げる力は3つあります。2番目の圧力による力は、バルーンアートでも表れますが ゴムの聴力によって普通は押さえられています。 必要な力
F=F1+F2+F3
=
μ0 Ip2

2
( ln 8R

a
-1 + li

2
)+2 π2 a2 { < p > + 1

2 μ0
(Bt02- < Bti2 > ) }
=
μ0 Ip2

2
( ln 8R

a
-1 + li

2
)+ μ0 Ip2

2
(βp - 1

2
)
=
μ0 Ip2

2
( ln 8R

a
+ li

2
+βp - 3

2
)
(23)
ここで、(16)式 [(Bt02- < Bti2 > )/(2 μ0)]= < p > -[1/(2 μ0)]Bp02 = [1/(2 μ0)][(μ02 Ip2)/((2πa)2)](βp -1) を用いた。

従って、この力にbalanceするためにはF=2πR Ip Bv より
Bv = μ0 Ip

4 πR
( ln 8R

a
+βp + li - 3

2
)
(24)
の垂直磁場が必要である。

plasmaがshellに囲まれていると、plasmaの変位による image curr.がshellに流れて垂直磁場の全部または一部を作る。 但し、有効なのはshellの時定数程度の時間までで、 放電がより長く持続するときには外部から磁場を入れねば ならない。

shellの時定数

τ = [(μ0 σb d )/2] 但し、b、d : shellの小半径、厚さ σ : Shellの conductivity

通常のskin time [(μ0 σd2)/2] に比べて[b/d]だけ長いが、これはimage curr.が特別な 形に流れるからである。

Shellの電流分布がj cosωとすると ( d << bで 厚さd内は一様とする)

B
 
=





B0

e
 

y 
(r < b) ー賤
B0 b2

r2
( 2xy

x2+y2

e
 

x 
+ y2-x2

x2+y2

e
 

y 
)
(r > b)
B0=[(μ0 j db)/2b] (磁場の導出は後の”For fun”の通りだが各自試みよ。)

この磁場のエネルギーはr > b、r < bで等しく全体で
EB = πb2

2 μ0
( μ0 j d b

2b
)2 ×2 = μ0 πj2 d2 b2

4
一方shellの抵抗項は
Loss=
2 π

0 
(j cosω)2

σ
bd dω = πj2 b d

σ
だから
τ

2
= EB

Loss
= μ0 πj2 d2 b2

4
σ

πj2 b d
= μ0 σb d

4
       (QED)
ついでに述べれば、shell中の一様な縦磁場(つまりtoroidal磁場) に対するskin timeも同じ時定数を与える。(一様電流であるから 極めて容易。各自確かめよ。)

初期のTokamakはすべてshellを持っていて、これによる安定化が Tokamakの重要なfactorであった。今日のTokamakは運転時間が sec-orderとなりshellによる安定化効果を期待できなくなり、 plasmaの位置を検出して、feedbackによってBvを調整する のが普通。しかしfeedbackでは早いresponseができないので、 早い変化に対しては有効なshellをつける。 これをresistive shellと呼ぶ。

liについて

図の様な同軸にj=j(r), (0 < r < a) の電流を流す。
B(r) =





μ0 I

2 πr
( a < r < b )
μ0

2 πr

r

0 
j(r) 2πrdr
( 0 < r < a )
I=0a j(r) 2πrdr

磁場の単位長さあたりのenergy
W = We + Wi = 1

2
L I2

We = 1

2μ0

b

a 
B2 2πrdr = μ0 I2

4π
ln b

a

Wi = 1

2μ0

a

0 
B2 2πrdr = 1

2μ0
×πa2 < Bi2 > = μ0 I2

4π
( < Bi2 >

2 B2(a)
)

L = μ0

2π
(ln b

a
+ li

2
)
すなわちliは 導体内部の磁場に基くinductanceを[(μ0)/(4π)]で normalizeしたものである。
Wi = 1

2μ0

a

0 
B2 2πrdr = 1

2μ0
×πa2 < Bi2 > = μ0 I2

4π
( < Bi2 >

2 B2(a)
)

j=1 (uniform), li = 1

2

j=1- r2

a2
(parabolic), li = 11

12

平衡限界ベータ

(17)(19)式にもどる。
Λ = βp + 1

2
li -1

Bp(ρ = a) = Bp0(1+ a

R
Λ cosω)
[a/R]Λが1に近づく、すなわち plasma pressureが上昇し、βp ~ [R/a] となると、ρ = aの磁気面はω ~ π(主軸側)で splitする。すなわち、βp < [R/a] がTokamakのβ limitを与える。 安定性を決める安全係数(safety factor) q [a/R][(Bt)/(Bp)] 、とすると
β < p > 2μ0

Bt2
= < p > 2μ0

< Bp2 >
< Bp2 >

< Bt2 >
= βp ( a

qR
)2 < 1

q2
a

R
~ 0.03
となり、3 ~ 5 % 以上には出来ない。

逆に βp をもっと増大すると Bp=0の点が軸側から plamsaの内部に入ることになり、磁気面は上下に長く、 内外に狭い形になる。( noncircilar cross section Tokamak)

円筒にcosine分布で軸方向に電流が流れるときの磁場(For fun)


l2

RB
 
= b2 + r2 -2br cos(θ-ω)
電流素 dωj cosωによるR 点の 磁場は
Bx(ω)d ω = μ0 dωj cosω

2πl
r sinθ- b sinω

l

By(ω)d ω = μ0 dωj cosω

2πl
b cosω- r cosθ

l
従って、a=[r/b]とすると
Bx = μ0 j

2πb

2π

0 
dω (a sinθ- b sinω)cosω

1 + a2 -2a cos(θ- ω)
(ω-θ)=xと置き換えると
Bx = μ0 j

2πb

2p

0 
dω (a sinθ- sinω)cosω

1 + a2 -2a cos(θ- ω)

Bx
=
μ0 j

2πb

π

-π 
dx {a sinθ- sin(θ+x) } cos(θ+x)

1 + a2 -2a cosx
=
μ0 j

2πb

π

-π 
dx (a sinθ- sinθcosx -cosθsinx) (cosθcosx -sinθsinx)

1 + a2 -2a cosx
(sinx)のodd term はvanish
Bx
=
μ0 j

2πb

π

-π 
dx a sinθcosθcosx - sinθcosθcos2 x + cosθsinθsin2 x

1 + a2 -2a cosx
=
μ0 j

2πb
1

2
sin2θ
π

-π 
dx a cosx - cos2 x + sin2 x

1 + a2 -2a cosx
=






μ0 j

2πb
1

2
sin2θ { 2πa2

1-a2
- π(1+a2)

1-a2
+π} = 0
( |a| < 1 )
μ0 j

2πb
1

2
sin2θ { 2pa

a(a2-1)
- π(a2+1)

a2(a2-1)
+ π

a2
} = μ0 j

2πb
1

2
sin2θ 2π

a2
( |a| > 1 )
同様にして
By
=
μ0 j

2πb

π

-π 
dx {cos(θ+x) - a cosθ} cos(θ+x)

1 + a2 -2a cosx
=
μ0 j

2πb

π

-π 
dx (cosθcosx - sinθsinx - a cosθ) (cosθcosx -sinθsinx)

1 + a2 -2a cosx
=
μ0 j

2πb

π

-π 
dx cosθ cos2 x + sin2 θsin2 x - a cos2 θcosx

1 + a2 -2a cosx
=






μ0 j

2πb
{ π(1+ a2)

(1-a2)
cos2 θ +πsin2 θ- 2πa2

1-a2
cos2 θ}
( |a| < 1 )
μ0 j

2πb
{ π(a2+1)

a2(a2-1)
cos2 θ + π

a2
sin2 θ - 2aπ

a(a2-1)
cos2 θ}
( |a| > 1 )
=






μ0 j

2 b
( |a| < 1 )
μ0 j

2πb
πcos2θ

a2
( |a| > 1 )
まとめると、(r < b)で
Bx = 0, By = μ0 j

2 b
(uniform !!)
(r > b)で
Bx = μ0 j

2 b
( b2

r2
)sin2θ, By = μ0 j

2 b
( b2

r2
)cos2θ, |

B
 
|= μ0 j

2 b
( b2

r2
)

Tokamakの安定性

定常状態におけるringの安定性をPositional Stabilityと 呼ぶことがある。 主半径の収縮、上下移動、回転、横滑り等である。 これらは垂直磁場BVの形を適当に選べば安定化できる。

安定な平衡を実現するためには、Bvが大半径R方向に変化し、 その指数が 0 < n < 1.5の範囲に収める必要があることが、実験的にも確かめられています。 トカマクのプラズマの平衡については、永年研究されており、現在では、プラズマの断面を D型や三角形に制御したり、左右にシフトするようなことは安定に行われる様になっています。

上下方向に対しては明らかに、 BV=BV0([(R0)/R])n とすればn > 0。

R方向については、plasma ringに働く力 F=-2pR Ip (BV-BV0) が復元力であれば良い。 ([(F)/(R)] < 0)

ここで、BV0は平衡に必要な垂直磁場。
Bv = μ0 Ip

4 πR
( ln 8R

a
+βp + li - 3

2
) C1 Ip

R
(lnR + C2)

- 1

2π
F

R
= (Ip+R Ip

R
)(BV-BV0)+R Ip(-n BV

R
+ 1

R
BV0- 1

Ip
d Ip

d R
BV0- C1 Ip

R2
) = Ip BV (-n+1- R

Ip
d Ip

d R
- C1 Ip

R BV
) > 0
よって
n < 1- R

Ip
d Ip

d R
-C1 Ip

R
1

BV
これより先は装置の電源を定めなければならない。 電源(ジュール、BV)が高インピーダンスの定電流電源であれば Ip=const、
d Ip

d R
=0 n < 1-(ln 8R

a
+βp + li - 3

2
)-1
低インピーダンスの定電圧電源であれば 磁束が一定Lp Ip=const
d Lp Ip

d R
d

dR
{Ip μ0 R (ln 8R

a
-2+ li

2
) } = μ0 Ip { ( R

Ip
dIp

dR
+1) lnR + C3 + 1 } = 0
よって
n < 1-(-1- 1

ln 8R

a
-2+ li

2
)-(ln 8R

a
+βp + li - 3

2
)-1 3

2
Positional Instabilityの他にplasma curr.を運んでいる場合に 発生するMHD Instabilityが重要である。 半径a、長さLの円柱plasmaを考え、 pertarbation [(x)\vec]の空間依存性を [(x)\vec](r,θ,z)=[(x)\vec](r) exp{ i(mθ-k z) + γt} とする。z方向の境界条件より k=[(2πn)/L]となる。 γは成長率。

Ideal MHD方程式
ρ
d

v
 

dt
= -P +

j
 
×

B
 
,

E
 
+

v
 
×

B
 
=

0
 
+ Maxwell's eqs.
×

E
 
= -
d

B
 

dt
,×

B
 
= μ0

j
 
に、 [v\vec] = [(d [(x)\vec])/dt] を入れ、 equilibriumからのずれ[(x)\vec]について liniearizeした式をたて、与えられた境界条件の もとで解の成長率を調べる。

結論として、 fixed boundary と free boundaryについて求め、 後者が前者よりも大きな成長率を持つこと。 この成長率に対応する等価な'力'はToroidicityによる 力と比較して、より大きいのでtoroidal systemにおいても この結果は適用できる。 成長率の2乗に比例する pot.energyのq依存性を考える。 (kink instability = free boundary) ここでqは
q(r)= 2pr

L
Bz

Bq
= r

R
Bz

Bq
qは磁力線に沿ってtoroidal方向に一周したときの poloidal方向の回転数を示す。

一般に、 qa q(a) = [m/n] の近くで不安定となる。 特に、q=1をKruskal-Shafranov limitと呼び、 q < 1では電流分布の形によらずに不安定。 M=2,3などのhigher modeでは電流はpeaking をしている方が安定である。 又conducting shellをplasma近くに置けば安定化できる。 Kink modeに対しては、電流分布はpeakしている方が良いが、 plasma中でqが低くなりinternal kink modeの microinstabilityが発生する。


逃走電子

基本的には、トカマクでプラズマ電流を流すのも、ベータトロンで 電子を加速するのも同じメカニズムです。 ジュール加熱を行っているトカマクプラズマにおいて、数ボルトの周(ループ)電圧が誘起されていますが、 真空容器のベース圧力(トカマクでは完全電離プラズマが作られているので、プラズマの密度と 考えて良い)が低い場合、 少数の電子がベータトロンの様に高エネルギーまでに加速され プラズマ電流を担う様な状況が起こりうる。

この様な逃走電子が発生すると

などの問題が発生します。

ヘリオトロン

ヘリオトロンは、日本で開発された独自の閉じ込め装置です。 トカマクと同様のドーナツ型の磁気面を外部コイルのみで作ろうという閉じ込め方式が ステラレーター(stellarator)やヘリオトロン(heliotron)/トルサトロン(torsatron) 等の ヘリカルシステム(ヘリカル系)です。

最初のステラレーターはアメリカのPrinceton大学で Spitzerにより考案されました。 50年ほど前、私が買ってもらった2001年の世界という書籍に、 彼の考案したステラレーター装置が掲載されていて子供心にワクワクして読んだ事を思い出します。 しかし、 トカマクと異なり3次元的な非軸対称磁場配位であったためエラー磁場による 閉じ込めの悪さに苦しみ、 一時アメリカではヘリカルシステムの実験装置はなくなってしまいました。 プリンストンプラズマ研究所では、その後、ST, PDX, PLT,TFTRといった トカマクでの研究でアメリカ、そして世界をリードし続けることになります。

ステラレーターの研究は 西ドイツのMax--Planck研究所や旧ソ連のLebedev、 Kurchatov両研究所などで続けられたが、 同じ頃京都大学の宇尾は、よりコイル系が簡単で閉じ込め性能の良い ヘリオトロン磁場構想を提案した。(日本物理学会英文誌、1961年) ちなみに、宇尾先生の修士課程の講義での口癖は、 「私に3兆円の予算をくれれば、ヘリオトロン核融合発電所を作ってみせる」というものでした。

宇尾は、始めはコイルが作る磁場ではなく、電荷周りの電場の構造を解析し、 2種類のコイル配位を提案しました。すなわち、電流比を変えた円形コイル列(ポロイダルヘリオトロン)と これを隣り合う列同士で繋ぎ変えたらせんコイル(ヘリカルヘリオトロン)です。 鉄粉を用いた可視化により、ヘリオトロン磁場はコイルの近傍に留まるものと、 閉じ込め領域全体を覆い尽くし磁気面を形成するものに大別されることがわかります。 この磁場構造の境界をセパラトリックス、あるいは最外殻磁気面と呼びます。

京都大学ではヘリオトロンの名前がついた一連の実験装置を数年おきに建造しました。 ヘリオトロンAからCはポロイダルヘリオトロンです。 私も、B装置とC装置が実験室の片隅に残されていたのを見ていますが、 A装置はセラミック製の真空容器が公開実験の直前に壊れて、写真もほとんど無い幻の装置です。 1970年に建設されたヘリオトロンDは、同規模のトカマクに匹敵するデータを示しました。 このころ、東京でIEAE主催の核融合国際会議が開催され、 おそらくヘリオトロンの名前が海外の研究者にも広く伝わったのではないでしょうか。

1980年代にはヘリオトロンEや西ドイツのWendelstein VII--Aが 1[keV]を 越える温度のプラズマを無電流状態でつくり出したことから ヘリカルシステムの研究が再び活発になりました。 京都大学でも、サテライト装置として強磁場装置ヘリオトロンDMや 高周波加熱装置ヘリオトロンDRが作られていましたが、 21世紀に入って 立体磁場配位のヘリオトロンJに引継がれています。 (F〜Iの名前は、実は概念設計された装置の名前にすでに使われていました。)

西ドイツではモジュラーコイルを使ったWendelstein VII--ASが、 名古屋大学とアメリカのOak Ridge研究所ではヘリオトロン/トルサトロン型の CHSとATFが 1989年前後にあいついで稼動を始め、 ヘリカルシステムでのプラズマ閉じ込めについて 重要なデータを提供してきました。

これらの研究成果をふまえて、核融合科学研究所では大型ヘリカル装置(LHD)の建設を進めてきて、 1998年3月31日ファーストプラズマの通電に 成功し、 2017年3月7日より重水素ガスを用いたプラズマ実験を開始し、DーD反応で生成された中性子の 計測もスタートしています。

LHDの図とその中の人物図をみると、ITERほどではないものの、かなりの 大きな装置であることが分かります。 LHDは世界最大級の超伝導装置でもあります。 ヘリカル系の磁気構造は、対称性がないため、コンピューターを使った数値計算により 研究されています。 私自身、簡易版の計算コードを自作したり、京都大学で開発された 計算コードを使って研究したことがあります。 30年ほど前の、初期の学情センターは計算機サーバーも提供していたのですが、 磁場計算をさせるとうんざりするほど時間がかかったものです。

真空磁気面のマッピング

磁場計算コードの検証と既存の装置のコイルの 製作精度の確認のために磁場構造の可視化実験が、 多くのヘリカル装置で行われました。ヘリカル系装置は、トカマクと違って、 外部コイル磁場のみで磁気面を形成することが でき、この実験を真空磁気面のマッピングと呼んでいます。 これまでに3つの方法が応用されています。順に紹介しましょう。
  1. ビームプローブ法
    小型電子銃を使うと極低エネルギー(10eV程度)のパルス状の電子ビームを真空容器中の 閉じ込め領域内に放出することが出来ます。 このビームは磁力線に沿って運動するため、プローブによってこのビーム電流が どの位置を通るかを調べることにより、磁気面構造を調べることができます。 プローブを2次元的に動かすことにより磁気面の断面構造が可視化出来ています。

    中心近くにポロイダルモード数m=2の三日月状の磁気島が認められています。 磁気島とは、何らかの誤差磁場の影響で、本来であればトーラス全体に広がって形成されるはずの 磁気面の一部が局所的に閉じた構造を作ったものです。 プリンストンの昔のステラレーター装置で同様の実験を行った年配の先生のお話では、 当時のステラレーターの磁気面はグチャグチャだったそうです。 ヘリオトロンEで行われたこの実験では、地磁気ではなく、ECH加熱用ジャイラトロンの鉄シールドの磁化が 誤差磁場の原因と考えられています。

  2. ビーム蛍光法
    直流の電子ビームを走らせるまではプローブ法と同じですが、 ビームの検出には蛍光剤と電子ビームの 反応による蛍光を用います。 この方法はヘリオトロンE(H-E)で初めて使われ、 私自身もその実験を手伝いました。 ピッチ1センチ程度の金網に蛍光剤を塗布し、焼結し、 真空容器内部に潜り込んで取付けました。 実験室の照明を落として観測すると、まるで緑色の星座を見ているかの様でした。 電子銃の設置位置を磁場構造の共鳴点におく事により、プローブ法で見たのと同じ磁気島構造が見えます。 さらに、鉄シールドをクレーンで移動させると、共鳴が外れて磁気島の変化をリアルタイムで観測できました。

    大型ヘリカル装置(LHD)では、蛍光剤を塗った棒をゆっくり動かし、ビデオ撮影することにより、 より簡便に磁気面構造の可視化と数値計算との比較が可能となりました。 W7-Xでは、真空容器内に低圧のガスを詰めることにより、ガスが 電子ビームと反応して発光する様を 利用しています。磁力線の複雑な3次元構造が 見て取れます。

  3. 抵抗法
    ヘリオトロンEでは、第三の方法も積極的に使われました。真空容器内にも多少の残留ガスがあるため、 磁力線に沿って走っている 電子も衝突によって別の磁力線に移動し、徐々に拡散します。 従って、電子銃の位置を変えて抵抗値を測定し、等抵抗線を描くと 左下の様に磁気面構造に対応することが分かります。真空容器内の1点から磁力線を追跡し、 真空容器壁に達するまでの長さを結合長と呼びます。 磁気面上では結合長は事実上無限大です。しかし、周辺部では結合長の長い領域と短い領域が複雑に入りくんでいます。

    抵抗法によって初めてこのような構造が実際に形成されている事が確認されました。 人為的な誤差磁場を掛けると磁気島が形成されることが示されています。 また、抵抗値の値は電子がヘリカルコイル間の磁場の弱い 領域に補足される効果(新古典輸送)を 考慮しないと説明できないことが 分かりました。

中性子計測

最近重水素プラズマ実験を始めたLHDでの中性子計測を紹介します。 トーラス真空容器内部で生成された中性子は、装置本体から離れた検出器で モニターされています。 したがって、装置全体での中性子生成量と 検出器出力の校正実験を予め行う必要があります。 核融合科学研究所では、ウランより思いカリフォルニウム252という放射性核種を中性子源として、 トーラスの異なる位置に設置したときの検出器信号を調べています。 それにより、プラズマのイオン温度や加熱用の高エネルギーイオンの振舞についての情報が新しく調べられる様になりました。