コッククロフト・ワルトン型加速器


この加速器によって始めて全人工の 原子核破壊に成功したという点で、歴史的に大きな意義を持っている。

設計の原理

コッククロフトワルトン(CW)加速器をはじめとする 直流型の加速器の要素は ジョゼフ・ジョン・トムソンと彼が電子の発見に用いた陰極線管 に全て兼ね備えています。

左の陰極が電子源に相当します。 高融点の金属線を加熱し、引き出し電圧を掛けると容易に電子は取り出すことができます。 陰極線管では数キロボルト程度の電圧を掛けて電子ビームを生み出していますが、 もし数メガボルトの電圧をつくれれば、直ちに人工放射線源を建設できるはずです。 低エネルギー電子による放電をもとにしたイオン源を用意すれば、イオンビーム、あるいは人工のアルファ線も作れます。

昔佐渡の金山で地下漏水を人力で汲み上げる必要がありました。 しかし、大気圧の関係で、どんなポンプを使っても水を10メートル以上くみ上げることはできません。 金山では、多数のポンプを組み合わせて排水を行ってきました。加速器用の電源についても同じ様な考えが使えないでしょうか?

キャパシタ(コンデンサ)に一定の電荷を送ると、電荷量に比例した電位差が生じます。 回路中にダイオード(昔なら二極管)を含めると、交流電源であったも直流電圧を生み出すことができます。 コッククロフトとウオルトンはこの回路を組み合わせた電圧増倍回路を発明し、始めて全人工の原子核破壊に成功しました。


昇圧の原理

さて現在我々の実験室や家庭にはAC100V、200Vが配電されているが、 この発送電の方法はつぎのようになっている。 すなわち水力、火力あるいは原子力などを使った数10万kWの大型発電所で 大出力発電機を廻し、AC20 ~ 30kVで大電流の電気を起こす。 これを発電所内の変電所で200 ~ 500kVに昇圧してから 高圧送電線によって需要地近くに送り、ここの変電所で 降圧し6600Vに落とす。以後電柱線ないし地下ケーブルによって 工場、民家の近くに送電し、さらに柱上変圧器や受電設備に よって100、200Vに降圧する。これらの過程は全部交流で同じ周波数が 使われる。ただし、関東方面以北は50Hz、関西以南は60Hzである。

実験室の100、200Vの交流を数100kVに昇圧するには、 性能のよい変圧器を使用して二次巻数/一次巻数を 極めて大きくすればよい。しかしこの電圧で正の荷電粒子を加速しようと すると半サイクルしか使用できず、また加速のエネルギーも eV = eV0 sinwtとなって揃わない。従って 交流100、200Vを用いて高い直流電圧を得ることが必要と なってくる。

共振変圧器
変圧器の巻数比n2:n1を大きくするとき、二次側の電圧は 原理的には上昇するが、巻線間の分布容量が増してくる。 いま二次コイルのインダクタンスをL、その分布容量をC とするとき、一次コイルを通じて送られる電流の周波数f がf=(2π{LC})-1 をみたして共振が起こるとき、高い電圧が二次 側に発生するから、これを加速電圧にすることができる。 ただし、交流電圧であるために、半サイクルしか使用できず、 また加速電圧も変動してサイン波の半分となる。 この方式を 共振変圧器(resonant transformer) といい、加速エネルギーをあまりそろえなくてもよい 電子照射器として使われている。 また、交流のピーク点だけ電子をパルス的に放出して 加速することも行なわれる。General Eletrics社では
V = 4 MV, I=6.5 mA
のものを市販している。
コンデンサを積上げて中央に連動スイッチ のある装置を考えよう。始め スイッチは全部下向きであったとし
C0=C1=C2=C3 = ... = C
とする。このとき各コンデンサに蓄えられた電気量を
Q1,Q2, ... とすると
Q1=CV, Q2=Q3 = ... = 0
である。

スイッチが上向きになると
Q1=Q2= 1

2
CV, Q3=Q4 = ... = 0
となり、ついで下向きなると
Q1=CV, Q2=Q3= 1

4
CV, Q4=Q5 = ... = 0
再び上向きで
Q1=Q2= 1

2
(CV+ 1

4
CV), Q3=Q4= 1

8
...
となる。こうして無限回スイッチが上下すれば
Q1=Q2=Q3 = ... = CV
となり、各コンデンサの電圧がすべて V となる。 こうして左側の C0, C2, C4, ... のコンデンサ塔の端子から V ,2V,3V,... の直流電圧が得られる。このような原理は特に新しいものではなく、 昔佐渡の金山で地下漏水を人力で汲み上げるに 使われていた方法である。

ところでスイッチの役目は、要するに電気量を C0 C1 C2 C3 と一方的に移すことであり、奇数 C1,C3,... のコンデンサは移すときの中継の役割を果たしている。そこでスイッチを 整流器におきかえ、また電源をピーク 電圧E、周波数fの交流におきかえた回路が考えられ、 この回路は グライナッヘルの倍電圧結線 とよばれている。 C1,C2,C3, ... が時間とともに順次充電 されて行くが、ここで負荷電流が流れないとき、 接地点に対する 各コンデンサの端子P1,P2,P3,... の電圧は
C1: 0 ~ 2E, C2: 2E

C3: 2E ~ 4E, C4: 4E

C5: 4E ~ 6E, C4: 6E

:, :
となり、奇数番コンデンサは電圧変動をするが、偶数番コンデンサは一定 2nE (n=1,2,3,...) の直流電圧が発 生する。結局 2n個のコンデンサと2n個の整流器とを 用い、2nEの直流高電圧を発生させて加速電圧としたのが コッククロフト・ワルトン型 (ockcroft-Walton) の加速器である。

リップルdV

交流を整流して直流化する方式の回路では、負荷電流が流れるときに、 発生した電圧の脈動が生じる。これを リップル(ripple)という。 リップル電圧の大きさをdV として、これを上の回路に従って求めてみよう。

いま最終段C8の電気量が1サイクルに dQ変動したとすると、C8の電圧変動は dQ/C8 であるから、これと直列につながれているC6の 電気量もまず Q変動する。ところがC8の変動は D7 C7 D8 を通して C6 より供給されるから C6の電気量はさらに dQ変動し、合わせて2dQの変動を生ずる。 このようにして偶数番コンデンサの電圧変動は
C8: dQ/C8, C6: 2dQ/C6, C4: 3dQ/C4, C2: 4dQ/C2
となるから、これらの総和が出力端子P8に生じるリップル 電圧である。すなわち、
dV = dQ ( 1

C8
+ 2

C6
+ 3

C4
+ 4

C2
)
(2.1)
となる。n段の回路で C2=C4=... = C2n=C のとき
dV = dQ

C
(1+2+...+n) = dQ

C
n(n+1)

2
(2.2)
と求まる。

一方負荷電流をI、1サイクルの時間をdtとすると
dQ = I dt, f=1/dt, I=V/R
であるから、これらを(2.2)式に入れて
dV

V
= n(n+1)

2
1

fCR
あるいはdV = n(n+1)

2
I

fC
(2.3)
をえる。 (2.3)式はリップルの率や大きさを与えるもので、 fが高いかCを大きくすると dVが減ることがわかる。例えば
n=3, C=0.001 mF, f=1 kHz, R=3000M W
のとき
dV = 6 ×106 I すなわち 6kV/mA, dV/V = 2 ×10-3すなわち 0.2 %
となる。

電圧降下DV

コッククロフト型の高電圧回路で負荷電流が流れないとき、 出力端子の電圧は2nEである。もし負荷電流Iが流れる ときの電圧Vは2nEより低くなる。そして
DV = 2nE - V
(2.4)
電圧降下(voltage drop)という。 このDVはさきのりっプルdVとは別に 発生するもので、これを導いてみよう。
前節のリップルを求めた過程で

C2のリップル=n I

fC
, C4のリップル=(n-1) I

fC
, ...C2nのリップル= I

fC
,
であった。ところでC2にリップルn [I/fC] が生じた原因は、C1にすでにn [I/fC]の電圧降下が 生じていたため、C2が2Eまで充電されなかったと 考えることができる。従って各コンデンサの電圧降下 DV1,DV2, ...
C1: DV1 = n I

fC
, C2: DV1 = DV2 = n I

fC
(2.5)
である。一方 C3に対してはC1とC2の電圧降下が加わって 充電されるから
C3: DV3 = DV1 + DV2 = 2n I

fC
(2.6)
C4に対してはこのDV3とC4のリップルとが 加わって充電されるから

C4: DV4 = DV3 + dV4 = { 2n + (n-1) } I

fC
(2.7)
以下同様にして
C2n: DV2n = DV2n-1 + dV2n = { 2n + 2(n-1) + ...+ 2 ×2 + 1 } I

fC
(2.8)
をえる。従って偶数コンデンサ塔の上端では
DV = DV2 + ...+ dV2n = ( 2n3

3
+ n2

2
- n

6
) I

fC
(2.9)
であり、出力電圧は
V = 2nE - ( 2n3

3
+ n2

2
- n

6
) I

fC
(2.10)
で与えられる。

(2.10)式より、n 3 のときは、 V 2nE - [(2n3)/3] [I/fC] となるが、これは段数 n を大きくしても 出力電圧が上がらぬことを 示している。例えばn=3とn=6を比べると
C=0.001 mF, f=5 kHz, I=1mA
のとき
dV(n=3) = 4.4 kV, dV(n=6) = 32.2 kV
となり、nが大きくなると急速に電圧降下が増すことがわかる。

電源回路の特徴

(2.10)式より段数nが多ければ負荷電流Iが 増すと急速に出力電圧が下がる。そして最大電圧をえる段数は
n (Vmax)   

EfC

I
 
(2.11)
で与えられる。

リップルdVと電圧降下DVとは負荷電流Iが流れると 同時に相伴って生ずることがわかる。 いまnが大きいとき
DV 2n3

3
I

fC
,dV n2

2
I

fC
(2.12)
であるから


DV

dV
4n

3
(2.13)
の関係がある。

一方(2.10)式は
V = 2nE -Z I, ここで Z = ( 2n3

3
+ n2

2
- n

6
) 1

fC
(2.14)
の形に表わされるが、ここにZは [ohm]の次元をもっている。 従ってこの電源の等価回路で、Zは 電源の内部抵抗と同じである。 Zが小さいことはDV,dVがともに小さいことに 対応している。このばあい、加速されたイオン・ビームの エネルギーが揃っていて、精密実験ができることを意味する。

このようにZの大小は加速器としての性能をいう上で 大事な量で加速管抵抗 あるいは 加速管インピーダンスという。
C1の両端にかかる電圧はE であるが、C2からC2nまでの電圧はすべて2E である。従ってこれらコンデンサの耐圧は 少なくともEまたは2Eとしなければならない。 実際には30kVとか60kV耐圧であり、これらは絶縁油紙を 挟んだ平行板電極のコンデンサであることが多い。 容量が小さいコンデンサではチタン酸バリウムを誘電体としたセラミック型が 多い。ところで各コンデンサに蓄えられた電気エネルギーを求めると、 C1=C2=... = C2n=C として
U1 = 1

2
CE2, U2 = U3 = ... = U2n = 1

2
C(2E)2 = 2CE2
(2.15)
であるから、全エネルギーは
U = U1 + U2 + ...+ U2n = 1

2
CE2 + (2n -1) 2CE2 = 8n-3

2
CE2
(2.16)
となる。この U の値が大きいとき、 放電時の事故が大きくなるから、 Cはなるべく小さくした方がよい。
整流器D1, D2, ...D2n はすべて逆耐圧が 2E 以上のものを使用する。 最近はセレン整流器を多数直列につないで 高耐圧にしたものが市販されており、1 10mAで逆耐電圧100kV程度のものも作られている。 ただし周波数は30kHzまでである。 なお周波数限度をもっと上げた 別型の整流器も作られつつある。

加速管と高圧側電源

荷電粒子を電解の作用のもとに直線的に走らせる真空円筒管を 加速管(acelerating tube)という。 その構造を第2.5図に示すが、ふつうは円筒型絶縁碍子や ガラスの両端に加速電極を挟んで何段にも積上げたもので、 これら電極に高圧電源からの 2E, 4E, ...2nE の各端子を順次つないで行く。このように加速管が一様な電位勾配を持った ほうが放電事故が少ない。

加速管の最上部には荷電粒子を発生させるためのイオン源や電子源、 およびこれから飛び出した荷電粒子ビームを集束させる電源やこれらの制御機構 が必要である。また加速管内は絶えず高真空に排気しなければ ならない。すなわちイオン源、イオンビームの集束法、 排気装置などの知識が必要となるが、これらは後の章で述べる。

(イ)
絶縁変圧器を用いる。 300kVぐらいの絶縁変圧器を 直列につないで高い耐電圧 をもたせるものであり、騒音がないので便利である。
(ロ)
絶縁ベルトまたは絶縁シャフトにより、 高圧側の発電機を廻す。地上の電動機によって高圧側発電機を 駆動する。騒音発生が欠点であるが、500kV程度の 加速器でも簡単に取付けられるとの利点がある。 とくに電子加速のばあい、電子源、電力が小さくてすむことから、 この発電機方式がよく使われる。
第3の方法はコンデンサの塔をもう1つ 立て、さきの電源の交流塔を利用してコンデンサーを介して 電力を高圧側に供給するのである。ただし、新しいコンデンサーに 電気エネルギーが蓄えられるので事故の原因となり、 低い交流周波数で使用することは不利である。 f ~ 10kc/s程度のとき、この方法が用いられることがある。

直流型加速器の改良

コッククロフト型加速器が基本となって、数々の改良や 新案が報告されている。その中で現在実用化されている 主なものを述べる。

高圧電源の電圧安定化

電源自体に内部抵抗Zがあるため、加速管にイオン電流Iが流れると DV=ZIの電圧降下が起こる。 ところがイオン電流は変動するものであるから、これに応じて加速電圧V も変動し、従って加速エネルギーも変わる。 この欠点を補うために、Iの変動によらずVを安定化する 定電圧方式が考え出された。

高電圧を抵抗分割して 低い電圧vとし、 v ∝ V とする。そしてこの vを基準電圧eと比較し、絶えずv=e となるように変圧器一次電圧を自動制御する。 この場合、コンデンサの容量があるため即応することは できないが、イオン電流の変動がゆるやかである限り、 充分よい安定性が得られる。こんにちでは DV/V < 10-3の安定化回路が実用になっている。

超高圧電子顕微鏡では1000kVの電圧に対し、 DV/V < 10-6の超安定な回路も作られている。

両波整流コッククロフト回路

交流を整流して直流化するとき、半波整流よりも両波整流の 方がリップルが大幅に減ることを知っている。 そこでコッククロフト回路に両波整流方式を使ったのが この回路である。これは半サイクルが右側から中央コンデンサ塔に 充電され、次の半サイクルでは左側から充電されるので、 dV,DVともに小さくなる。ただし E1=E2=Eと等しくする。この回路は整流器やコンデンサ数が増し、 とくにコンデンサに蓄えられるエネルギーがふえる欠点がある。 従ってなるべく周波数を高くし、小容量のコンデンサを用いる。

ダイナミトロン(高周波コッククロフト)

コッククロフト装置での周波数fをずっと高くするとき、 使用するコンデンサの容量Cを減らすことができるが、 もしf ~ 300kHzにも達するとコンデンサは単に 対向平板型で足りることになる。そこで 整流器を直列につなぎ、 両側に立てた2枚のRF電極板と整流器端子板間の 浮遊容量C'1, C'2, ... によって RF電圧を送りこんで整流する。 下部にはLC共振回路をおいて E ~ 100kVの高周波電源を発生させる。

整流器1個当たり約40kVまでの直流電圧が発生するから、 75個で最高3MVの端子電圧がえられる。全体を SF6などの絶縁ガス・タンク中に収め、RFを シールドすると同時に放電を防ぐ。 3MV,10mAのものが ダイナミトロン (dynamitron) の名称で売られており、電子照射用加速器として 実用されることが多い。なおイオン加速器として 使うこともあるが、この場合イオン源電力の供給が難しい。

絶縁変圧器型高電圧発生装置

硅素鋼板で作った変圧器は交流によって電力を伝えるとき、 極めて効率がよい。しかしながら鋼板が伝導体であるため、 巻線と鋼板を離して絶縁油中に浸さない限り耐圧が保てない。 もし鋼板に替わる絶縁体磁芯ができれば、 高耐圧回路が容易になる。

磁性材料の研究が進んで、高絶縁でしかも透磁率の大きい 素材が作られるようになった。これを磁芯とし、 多数の二次コイルと整流回路とを 作って、これらを直列に つなぐならば、簡単に高電圧が得られる。
f=10 kHz, C=0.001 mF, V=1 MV
のものが作られている。ただ、材料表面の放電や磁芯内部の 放電が起こるので、あまり高い電圧のものは、まだ 作られていない。

絶縁変圧器型加速器

電力を効率よく伝えるには、なんといっても変圧器がすぐれている。 そこでこの特徴を生かせて大電力の直流高電圧発生器ひいては 加速器を作る試みが行なわれてきた。

直流高電圧の技術は、電力輸送の問題ともからんで今後ますます 重要になってくるはずである。

変圧器鉄芯の間に絶縁物を挟み直流高電圧に 耐えるようにする。ただし交流の磁界は絶縁物を通って 上下の鉄芯につながる。 そこで、各段の鉄芯に二次コイルを巻き、 ここに発生した交流を直流に変えて各段つみ重ねるのである。 これを絶縁変圧器型加速器ICT(insulating core transformer) とよんでいる。

ICTでの問題点は、絶縁物の部分で磁界が漏れて効率が 落ちることと、この磁界によってとくに電子ビームが曲がることにある。 また放電によって絶縁物が破壊される恐れもある。

鉄芯でなくて絶縁性が高くしかも透磁率μの 大きい磁性材料が開発されたので、これを用いたICTも考案されている。 なるべく周波数を高くして使用するのが便利であり
f=10 kc/s, C=0.001 mF, V=1 MV
のものが高圧タンク中に収めて試作されている。 ただ磁性材料で沿面放電やコアー内放電がおこるとの 欠点もある。

以上2つのICTは高圧側の電源がえやすいとの利点もあって 今後の改良によっては応用が広まるであろう。

特徴と用途

コッククロフト型加速器は原理、構造とも簡単であり、 耐久性に富んでいる。また無駄な電力を消費することがなく、 大電流がえられて取り扱いも容易である。しかしながら発生高電圧に 限度があり、大気圧のもとでは1000kV(1MV)が限度であり、 高圧ガス入りのタンクに収めると3MVぐらいに上がる。 これ以上高圧になると、放電時に整流器やコンデンサが破損する恐れがある。 このような空中放電は空中に微量存在する電子(宇宙線や地面からの放射線で作られる)が種となって起ります。 従って、電子よりずっと重い負イオンが支配的な6フッ化イオウなどのガスで高圧回路を覆うことが有効です。

コッククロフトとワルトンとはこの加速器によって 低エネルギーの核反応を行なったのであるが、核融合炉の 建設が進むにつれて、この種加速器の価値が見直されてきた。 その大きな用途はプラズマに対する 中性粒子の入射加熱であり、まず強力な 水素イオン・ビームを加速し、これを中性化して入射する。

100 ~ 300kVの装置で各種元素イオンを加速して 半導体や結晶中に打込み、新しい電子工学素子を 作ることができる。これを イオン・インプランテーション (ion implantation) といい、生産工場や研究所で多数設置されている。

100ないし500kVのイオン加速器はそのまま 原子反応の器械として、 原子物理、宇宙物理、核融合の基礎研究に価値が見出されてきた。

一方1MV、10mA程度の電子加速器は、消毒、ポリエチレン包装紙の 耐熱化、ポリエチレン電線の強化など、 工業用に使われている。 またタンク式の1 ~ 3MVの超安定電源は、数mA の電子ビームを用いる 超高圧電子顕微鏡に利用されている。

500keV(0.5MeV)までにエネルギー領域で観測される核反応は 相当多種類であって、とくに
D + d = 3He + n, En = 2.5 MeV

D + t = 4He + n, En = 14 MeV
の2つの中性子発生反応は単色中性子源を得るのに 最適である。こういうわけで、 核反応の練習器機として 多く設置されている。