プラズマプロセス序論


プラズマはエネルギー分野、物質・材料分野、さらに環境・宇宙分野に 広く利用されている。本講義ではその中から、急速に発展しつつある 先端エレクトロニクスと環境工学を取り上げて解説する。 最後に、今後の発展が予想されている医療・生物分野のトピックスも 紹介する。

プラズマ(plasma)とは

ここで対象としてるプラズマ(low pressure plasma)は雷やオーロラという現象で初めて目にされたものです その後、真空ポンプと電池の発明によって、人工的に再現できる様になりました。 これが低圧放電で、その時に使われた装置がクルックス管と呼ばれるものです。 ちなみに、この装置から陰極線、つまり電子とX線の発見もなされました。 当時はプラズマと言う言葉もまだありませんでした。 同じ様な装置を使ってできるプラズマは今日、グロー放電プラズマと呼ばれています。 放電に用いガスの種類によりプラズマからの光の色が違うのは分かるかと思います。

由来
グロー放電でできた電離気体を、その特異な性質に着目した Langmuirが1928年に命名。

ラングミュアという化学者は、このような放電を観察して初めて「プラズマ」と命名しました。 じつは、彼はこの放電がなにか生物的なものと似ていると感じて生物学の分野から言葉を拝借したと言われています

漢字では?
等離子(中国)、電漿(台湾)。

定義
ランダムな熱運動をしている、少なくとも1種類以上の荷電粒子群が、 巨視的には電気的中性を保った状態。

存在
宇宙の既知物質の99%以上はプラズマ状態にあると言われている。

生成
放電、レーザー等で高エネルギーを集中して生成される。

blood plasma(血漿)
医学・生理学における用語。血液の55%をしめる液体成分の一つ (Purkinjeブルキンエ)。

protoplasma(原形質)
生物学における用語。本来の意味は動物胚の中に存在する粘着性の透明な物質で (1839年、Purkinjeブルキンエ)、 細胞内の生命を構成する本質的な物質という意味で使われていた。

Mycoplasma(マイコプラズマ)
「不定形の菌」という意味を持っている真正細菌の一属(1889年、Albert Bernhard Frank)。 主な特徴は、細胞壁の欠損、非常に小さな細胞サイズならびにゲノムサイズ。 しばしばヒトにおいて非定型肺炎を引き起こす。

ラングミュアの名付けたプラズマ(physical plasmaあるいは放電プラズマ)は当初分野が違うので問題にはならなかったのですが、 最近ではプラズマバイオあるいはプラズマ医療と言う分野の研究が盛んになり、 「ぷらずまをプラズマに照射する」という状況が生まれて来ています これについては後で説明するとして、この授業の対象の物理的なプラズマをきちんと定義しておきましょう。

プラズマの定義は、ランダムな熱運動をしている、少なくとも1種類以上の荷電粒子群が、 巨視的には電気的中性を保った状態です。 先ほどのクルックス管中の陰極線はこの定義からするとプラズマではありません。 通常、どのような組成の物体でもエネルギーを投入して温度を上げて行くとプラズマ状態になります。 具体的にはどれくらいの温度でしょうか? 密度(実際には数密度)が小さい宇宙では低温でもプラズマです。 太陽は高密度ですが、温度が1000万度に達するのでやはりプラズマです。


プラズマの利用

プラズマの利用として、 プラズマからの光を利用するもの、 プラズマのもつ熱エネルギーを利用するもの、 プラズマ中の電子が持つ高い化学反応生を利用するもの、 などが上げられます。これらのプラズマ利用をプラズマフロセッシング、 あるいは反応性プラズマと呼ばれています。 反応性プラズマと言う言葉は、京都大学の板谷先生が提唱されたものです。 反応性プラズマを取り巻く、より広い分野を網羅したプラズママップが作成されています。


プラズマプロセス

プラズマプロセシングとも呼ばれる、 物質創製や材料加工の分野で広く利用されている プラズマ技術の総称。 薄膜のデポジション(堆積)、エッチング(食刻)、 プラズマCVD、イオンプレーティング、スパッタリング などがある。

ドライプロセスなので廃液処理が不要、低温で高い反応速度 を得ることが出来る、異方性処理が可能などの利点がある。

プラズマプロセッシング研究会(SPP)や ドライプロセス国際シンポジウム(DPS)で最新の 成果が発表されている。